佐監公表第3号
平成25年2月21日
佐渡市長、甲斐元也様
佐渡市議会議長、祝優雄様
佐渡市教育委員会委員長、宮川安則様
佐渡市農業委員会会長、堀口一男様
佐渡市選挙管理委員会委員長、川島一三様
佐渡市固定資産評価審査委員会委員長、中川進様
佐渡市監査委員、清水一次
佐渡市監査委員、根岸勇雄
地方自治法第199条第4項の規定に基づき定期監査を実施したので、同条第9項の規定により、その結果を報告します。
なお、監査の結果に基づき、又は監査の結果を参考に措置を講じたときは、同条第12項の規定により、その内容を監査委員へ通知願います。
監査の実施時期
平成24年10月5日から平成25年2月20日まで
監査委員の氏名
- 清水一次
- 根岸勇雄
監査の対象
テーマ及び対象を次のとおり設定した。
業務委託に係る随意契約について
平成24年4月1日から同年9月30日までに締結された随意契約のうち、契約金額50万円を超える契約及び単価契約を対象とした。
調定事務について
平成23年度決算において収入未済とされたもの、及び歳出において過誤払につき戻入となりながら出納閉鎖期限までに戻入されなかったもの(佐渡市財務規則(以下「財務規則」という。)第52条の返納金)を対象とした。
監査の方法
業務委託に係る随意契約について
全ての部署を対象に、あらかじめ指定した様式による監査資料の提出を求め、その中から、個別の契約案件190件(契約金額50万円を超える契約127件、単価契約63件)を抽出し、関係書類等の監査を行うとともに、分析を行い、関係職員から説明聴取を行った。
調定事務について
対象とした事項について、財務会計システム上の処理状況の確認を行った。
監査の着眼点
着眼点は次のとおりである。
業務委託に係る随意契約について
- 随意契約を採用するに当たり根拠法令、採択及び業者選定の理由等が明確にされているか。
- 適切に予定価格が設定されているか。
- 見積書の徴収が適切にされているか。
- 契約保証金の取扱いが免除の場合も含めて適正にされているか。
- 契約書の作成が適正にされているか。
調定事務について
- 繰越の調定時期は適切か。
- 繰越の調定額は適正か。
監査の結果
業務委託に係る随意契約について
各課等から抽出した資料に基づく結果概要は次のとおりである。
契約事務に関する事項
歳出執行伺に関する事項
財務規則第177条第2項により、「随意契約をしようとするときは、あらかじめその旨を記した書面により、第161条第1項の区分に準じ決裁を受けなければならない。」とされている。これを受け、佐渡市財務会計運用マニュアル(以下「マニュアル」という。)において、方法が示されている。
あり | なし | 計 | |
---|---|---|---|
総額 | 37 | 90 | 127 |
単価 | 9 | 54 | 63 |
件数 | 46 | 144 | 190 |
歳出執行伺の起案を行っていたものは、190件のうち、46件(24%)である。なお、この件数とは別に「見積を徴してよいか」との伺が35件あったが、歳出執行伺は、契約の方法として、競争入札ではなく随意契約をしてもよいかいうところから始めるべきであることから、これは「歳出執行伺」とはみなされないと判断した。
なお、財務規則第33条の規定により、委託料に関しては、歳出執行伺を省略できないことになっている。
予定価格に関する事項
予定価格については、財務規則第178条において「随意契約をしようとするときは、あらかじめ第161条の規定に準じて予定価格を定めなければならない。」とし、第161条は「支出の原因となる契約をしようとするときは、当該事項に関する仕様書、設計書等により予定価格を別表第1に掲げる区分により定めなければならない」という内容となっている。
予定価格あり | 予定価格なし | 計 | ||
---|---|---|---|---|
積算根拠あり | 積算根拠なし | |||
総額 | 18 | 23 | 86 | 127 |
単価 | 2 | 6 | 55 | 63 |
件数 | 20 | 29 | 141 | 190 |
予定価格の設定とその算出根拠について、設定されていたものは、190件のうち、49件(26%)に過ぎず、そのうち、29件については、その算出根拠が示されていなかった。
随意契約の理由等に関する事項
随意契約を行う場合の根拠については、財務規則第142条第3項各号において示されている。
第1号 | 第2号 | 第3号 | 第4号 | 第5号 | 第6・7号 | 記載なし・他 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
総額 | 8 | 39 | 4 | 16 | 23 | 0 | 53 | 143 |
単価 | 6 | 14 | 0 | 13 | 8 | 0 | 30 | 71 |
件数 | 14 | 53 | 4 | 29 | 31 | 0 | 83 | 214 |
- 注釈
- 第1号
- 予定価格の金額区分を超えない
- 第2号
- その性質又は目的が競争入札に適さない
- 第3号
- 緊急の必要により競争入札に付することができない
- 第4号
- 競争入札に付することが不利
- 第5号
- 時価に比して有利な価格で契約できる
- 第6・7号
- 入札者がいない・落札者が契約しない
- 注釈
- 重複理由を含む。
- 第1号の金額区分は、委託契約の場合は50万円である。
あり | なし | 計 | |
---|---|---|---|
総額 | 33 | 94 | 127 |
単価 | 15 | 48 | 63 |
件数 | 48 | 142 | 190 |
随意契約とする理由について、根拠条文の記載のあったものは、190件のうち107件(56%)であり、そのうち、理由を具体的に明示していたものは、48件(25%)である。
なお、根拠条文が明示されていた場合においても、例えば、財務規則第142条第3項第1号の金額要件をその根拠としていながら、その金額を超えた契約を行っているものなど、明らかに根拠として妥当性を欠くものも見受けられた。
見積業者の選定及び見積徴収に関する事項
見積徴収業者数については、財務規則第177条第1項において、「なるべく2人以上の者から見積書を徴さなければならない。」とし、マニュアルにおいても、「1件の金額が50万円を超える場合、2業者以上の見積書を徴するものとし、見積書を徴する業者の選定につき歳出執行伺で決裁を受ける。」としている。
1者 | 2者 | 3者以上 | 徴収なし | 計 | |
---|---|---|---|---|---|
総額 | 55 | 21 | 15 | 36 | 127 |
単価 | 30 | 5 | 4 | 24 | 63 |
件数 | 85 | 26 | 19 | 60 | 190 |
あり | なし | 計 | |
---|---|---|---|
総額 | 41 | 50 | 91 |
単価 | 18 | 36 | 54 |
件数 | 59 | 86 | 145 |
今回抽出した190件のうち、1業者のみのもの及び見積書を全く徴収していないものが145件(76%)であり、このうち、その理由を明記していないものは86件であった。
1業者の場合、契約の相手方や金額決定の妥当性をどのように担保できるのか、また、見積書を全く徴収しない場合、契約の相手方や金額をどのようにして決定できるのか、手続上疑問が残るところである。
契約保証金に関する事項
契約保証金については、財務規則第145条第1項により、「予算執行職員は、契約の相手方に契約金額の100分の10以上の契約保証金を納付させなければならない。」とし、納付を原則としつつも、同条第5項各号に該当する場合は免除できることとされている。
契約保証金免除あり | 契約保証金免除なし | 計 | ||
---|---|---|---|---|
免除理由あり | 免除理由なし | |||
総額 | 0 | 67 | 60 | 127 |
単価 | 0 | 19 | 44 | 63 |
件数 | 0 | 86 | 104 | 190 |
今回抽出した190件のうち、契約保証金を納付させるとしたものは皆無であり、手続き上、見積通知等で免除するとしたものが86件、契約保証金についてどこにも記載のないものが104件である。
免除するとしている86件についても、財務規則のどの条項に基づき免除しているのか理由のあるものは皆無であった。
契約保証金は、履行を担保するものであり、免除するに当たっては、その根拠理由を明確にすべきである。
契約書に関する事項
契約書については、財務規則第144条において、記載すべき必要事項が定められている。
支払期限及び支払遅延に関する事項
契約代金の支払時期及び支払遅延に関する事項は、契約書に記載すべき必要事項とされている。
また、政府契約の支払遅延の防止等に関する法律において、支払時期と支払遅延利息額については、書面で明らかにしなければならないとされている。委託業務の支払時期は、請求があった日から30日以内であり、この定めをしなかった場合は、相手方の請求書を受理した日から15日以内が支払期限となる。この期限を過ぎた場合は、支払遅延利息が生じることになる。30日は支払期限の上限であり、どのようにするかは、その範囲内で書面において明らかにする必要がある。
記載あり | 記載なし | 計 | |
---|---|---|---|
総額 | 115 | 12 | 127 |
単価 | 60 | 3 | 63 |
件数 | 175 | 15 | 190 |
記載あり | 記載なし | 計 | |
---|---|---|---|
総額 | 56 | 71 | 127 |
単価 | 9 | 54 | 63 |
件数 | 65 | 125 | 190 |
今回抽出した190件のうち、支払時期の記載のないものが15件(8%)あり、支払遅延に関する事項の記載のないものが125件(66%)あった。
また、支払遅延利息の率について、国の示す率を超える率を書面に記載したものが2件あった。遅延利息の率は、告示された率を下回らなければ違法とはならないが、場合によっては、不必要な公金支出につながる可能性もあるので契約に当たっては注意が必要である。
契約保証金に関する事項
契約保証金についても、契約書に記載すべき必要事項とされており、免除する場合、その旨を契約書に記載する必要がある。
免除 | 記載なし | 計 | |
---|---|---|---|
総額 | 38 | 89 | 127 |
単価 | 15 | 48 | 63 |
件数 | 53 | 137 | 190 |
今回抽出した190件のうち、免除の記載があるものは53件(28%)に過ぎず、他は何の記載もない。
歳出執行伺における契約保証金の免除についての取扱いと併せて適切な取扱いが必要である。
その他の事項
契約代金の支払方法と支払実態について
契約代金の支払については、財務規則第75条において、「支出は、債務金額が確定し、支払履行期が到来した後において請求書の提出をまって債権者のために行わなければならない。」とし、その後段において、「ただし、支出の特例に該当する支出をしようとする場合は、この限りでない。」と特例事項が規定されている
今回抽出した契約の中に前金払をするという契約があったが、業務委託であり、確定債務に対する前金なのかどうか疑義のあるものが見受けられた。「前金払」「概算払」の概念を混同しているのではないかと思われる。
また、総額で契約し、「毎月請求により支払う」としながら、月ごとの支払額が契約書や添付書類上決められていないものや契約上「前金払する」と明記されていないにもかかわらず、前金払を行っているものも見受けられた。
部分払とする契約もあったが、業務内容が一部履行という考え方に合致するのか疑義があるものも見受けられた。
- 「前金払」とは、履行期限はまだ到達していないが、債務は確定しているものについて履行期前に支払うもの
- 「概算払」とは、債務がまだ確定していないものについて支出するもの
- 「部分払」とは、既済部分又は既納付部分に対して、その完納前にその代金を払うこと
これらは、いずれも財務規則第92条、第93条及び第152条において、規定されているものであるが、契約は支払の根拠となるものであるので、業務内容と照らし合わせ、その必要性や妥当性を判断し、契約書に明記されたい。
長期継続契約における解除条項の記載について
長期継続契約に該当するものは1件であった。これについては解除条項が明記されており、問題とすべき点はなかった
単年度契約における自動更新条項の記載について
単年度契約でありながら、「契約期間満了の3か月前までに双方どちらかから特段の意思表示がないときは、この契約は自動的に継続更新されるものとし、以後も同様とする。」等のいわゆる「自動更新条項」を付した契約が抽出した190件中8件確認された。
これは、翌年度以降の支出を義務付ける決定をその前年度に行うことになるので、債務負担行為が必要となるが、該当する8件で債務負担行為を得ているものは皆無であった。
このことについては、平成22年度定期監査においても指摘したところであるが、徹底されていない。
調定事務について
平成23年度決算で収入未済となった科目は、細々節単位で120件、また、過誤払いで戻入が終わらなかったものは3件である。
繰越調定額について
平成25年1月23日に、財務会計システム上の繰越調定の状況を確認したところ、決算収入未済額と異なる額で繰越調定をしているものが6件あり、また、調査日時点で未だ繰越調定されていないものが9件となっていた。
同額 | 相違 | 未調定 | 計 | |
---|---|---|---|---|
決算収入未済 | 105 | 6 | 9 | 120 |
戻入未済 | 3 | 0 | 0 | 3 |
件数 | 108 | 6 | 9 | 123 |
調定日について
平成23年現年度分の収入未済額は出納閉鎖期限の翌日である6月1日に繰越の調定を行い、平成23年度以前の収入未済である過年度収入未済額は平成23年度末日の翌日である4月1日に繰越の調定をすることになっている。
今回調査した123件のうち、調定日が4月1日あるいは6月1日となっていないものが32件であり、正しく繰越調定されていたものは82件である。
規定どおり | 相違 | 未調定 | 計 | |
---|---|---|---|---|
決算収入未済 | 79 | 32 | 9 | 120 |
戻入未済 | 3 | 0 | 0 | 3 |
件数 | 82 | 32 | 9 | 123 |
指摘事項
業務委託に係る随意契約について
地方公共団体の事務処理は、地方自治法第2条第14項において「地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」と規定されている。予算執行に当たっては、限られた予算をいかに効果的・効率的に活用すべきか常に考える必要がある。執行手続きの一つが契約行為である。
地方公共団体の契約は、競争入札が原則であり、随意契約は例外的な方法である。随意契約とすべき理由、業者選定の理由、契約金額等その手続きにあっては、公平性・透明性・経済性等が客観的に担保されなければならない。
今回の監査では、財務規則等に示された手続がなされていない事例が多数見受けられた。「随意契約とは何か」を担当者が十分に理解し、事務を執行しているとは言い難い現状であると考えられる。特に1者のみを特定し契約している場合については、それが唯一の相手方なのか、契約金額に妥当性があるのかを客観的に検証していく必要があると思われる。
市における契約事務処理に関しては、現在、財務課契約検査室を中心とした大きな組織的流れが定着しているが、その内容は工事に関する契約が主体であり、それ以外の多くの契約処理は各課にゆだねられている。今回の結果をみる限り、残念ながら契約処理の基本が各課に十分に浸透しているとは言い難い。
契約は、予算執行の基本となるものであり、職員一人ひとりが共通の認識のもと法令等に則り適正に処理しなければならない。そのためにも、効果的効率的に事務処理ができるような事務処理マニュアルの作成や基本書式の統一、研さんのための職員研修の実施等全庁を挙げた組織的な取組を検討されたい。
また、決裁権限について、佐渡市事務決裁規程における「契約の締結事務」の決裁責任者と、財務規則別表第1における「専決区分」との間で、解釈によって担当者が判断に苦慮する場合が生じることから、文言等の見直しを図られたい。
調定事務について
平成23年度決算で収入未済となった調定事務処理については、繰越調定を行っていないものや決算収入未済額と異なる金額で調定をしている事例が見受けられ、調定を行っている場合においても、調定日を誤っている事例が多く見受けられた。
自主財源の乏しい本市において、適正な歳入の確保は喫緊の課題であり、その整理が調定事務である。その意識は職員一人ひとりに求められるところである。
収入未済額の調定事務に関しては、平成20年度の定期監査において、「総体的な指導を徹底されたい」と指摘している。また、平成21年度の定期監査において、「収納状況を管理する観点から細節または細々節を設けて区分すべきと考えるところであり検討されたい」と指摘したところである。再検討し、適正な事務処理を徹底されたい。