佐監公表第1号
平成25年9月9日
佐渡市監査委員、清水一次
佐渡市監査委員、根岸勇雄
地方自治法第242条第4項の規定により、住民監査請求の監査結果を公表します。
監査の請求
請求人
省略
請求書の提出
平成25年7月10日
請求の要旨
請求人が提出した「佐渡市教育委員会小林教育長措置請求書」による請求の要旨は次のとおりである。
請求人が監査を求める公金の徴収を怠る事実
佐渡市社会体育施設真野体育館事務所(以下「真野体育館事務所」という)を特定非営利活動法人元気トキめきクラブ(以下「元気トキめきクラブ」という)が使用することに関し、佐渡市行政財産目的外使用条例(以下「条例」という)が適用されておらず、平成19年2月から平成25年4月15日まで、「申請書」も「許可書」も発行された経緯がない。当然に「使用料」及び「加算金」の徴収が6年間余りされていない。
平成25年度は指摘により職員駐車場2台分として7,200円の使用料と加算金として12,000円(電話等)の合計19,200円の納付を求めているが、他の同例をみても30,000円から80,000円が適正徴収と考えられるため、少なくとも過去3か年分の90,000円と平成25年度の不足分10,000円の合計100,000円は市に対し損害を与えている。
補正による補足説明
- 平成19年2月の発足以来、元気×2トキめきクラブは、6年間にわたり使用申請書の提出もせず、許可書の交付も受けず、減免ができない使用料の加算金徴収を平成25年3月31日まで免れている。
- 平成25年4月15日以後、同年4月1日にさかのぼり申請・許可がなされたが、加算金19,200円の算出確定根拠が不透明で、他の同例をみても適正徴収とは考えられず、真野体育館維持管理経費(共益分)の電気料・上下水道使用料・冷暖房料等は係数に入ってなく、すべての真野体育館維持管理経費のもと算出すると年額30,000円台が正しい算出計算額であり、過去3か年分の徴収は当然であり、少なくとも90,000円と平成25年度不足分10,000円余で合わせて100,000円台の徴収漏れの発生により、市に対し損害を与えているので早期に徴収すべきである。
- このことは、条例、佐渡市行政財産目的外使用許可事務取扱要領(以下「要領」という)の市教育委員会担当職員の「同条例、要領」の誤認解釈と職務怠慢が根底にある。
求める措置
平成22、23、24年度の正しい真野体育館維持管理総経費と加算金算出に必要な数値を佐渡市教育委員会・小林教育長に提出を求め、市民誰もが納得のいく正当な行政財産目的外使用の使用料及び加算金額を示していただきたい。
請求の要件審査
本件は、地方自治法(以下「自治法」という)第242条所定の要件を具備しているものと認め、これを受理した。
監査の実施
請求人の証拠の提出及び陳述
請求人に対して、自治法第242条第6項の規定に基づき、平成25年8月1日に新たな証拠の提出及び陳述の機会を設けた。
請求人は、陳述において請求の趣旨の補足説明を行った。
監査対象事項
元気トキめきクラブ(設立当初の団体名は「元気×2トキめきクラブ」)の真野体育館事務所の使用に関し、①「『使用料』及び『加算金』の徴収が6年間されていないこと」に違法性・不当性があるか、②「平成25年4月に佐渡市行政財産目的外使用申請、許可が出されたが、加算金の算出に真野体育館維持管理経費(共益分)の電気料・上下水道使用料・冷暖房料等の係数がないこと」に違法性・不当性があるかについて監査することとした。
監査対象部署及び関係人
教育委員会社会教育課を監査対象部署とし、平成25年8月7日及び8月20日に事情聴取及び関係書類の調査を行った。
また、関係人として元気トキめきクラブに対し、関係書類による調査を行った。
本件に対する社会教育課の説明は次のとおりである。
真野体育館事務所使用の手続きの実態について
元気トキめきクラブ設立からの経過
元気トキめきクラブは、文部科学省が実施した「総合型地域スポーツクラブ育成モデル事業」(平成7年度から平成15年度までの9年間)に基づき、旧真野町が下越教育事務所派遣主事の指導助言により設立に着手した。これを佐渡市が引継ぎ、社会体育の推進を目的に平成18年度に設立に至っている。(平成19年2月設立総会を開催し、活動を開始した)
設立後も市は当該クラブに社会教育主事を派遣し、活動が軌道に乗るまでは事務所の位置を真野体育館事務所(74.4平方メートル)の一部(20.0平方メートル)とし、無償で使用させている。
当初から、施設を管理している東教育事務所真野地区教育係(以下「真野地区教育係」という)では、総合型地域スポーツクラブの事業は、事務分掌にも記載されていて、担当者は業務として取り組んでおり、目的外使用の手続きが必要との認識がなかったため、この事務所使用の手続きは設立当初から行っていない。
一方、体育施設の使用について、設立間もない平成19年度から平成21年度までは、財政基盤が脆弱であるとの理由により、決裁を受け、他の体育団体等と同様の使用料の減免を行っていた。
平成25年度は、佐渡市体育協会(以下「体協」という)に加盟しており、体協加盟団体と同様の減免を適用している。
平成25年度の手続き
平成25年4月上旬、請求人から真野体育館事務所の目的外使用について、適切に事務処理が行われていないのではないかとの指摘があった。
調査した結果、設立当初から手続きをせずに事務所を使用させていたことが判明した。また、無償で使用させるかどうかを検討したことは確認されなかった。
他の行政財産目的外使用では、年度毎に1年間の行政財産目的外使用許可を出している。
4月上旬に真野地区教育係が、平成25年4月1日付で条例に基づき、元気トキめきクラブからの行政財産目的外使用申請書を受理し、許可した。
使用料については、条例第5条第2項により免除とし、加算金については、要領第4第2項第1号の規定に該当すると考えられ、免除することができると判断し、電話代については、その都度徴収するのではなく、月1,000円徴することとした。
平成25年度加算金の電話料以外を免除した理由
行政財産の目的外使用に関する事項は、条例、佐渡市行政財産目的外使用条例施行規則(以下「規則」という)及び要領に規定されている。
要領第4第2項では、加算金を免除できるものは同項第1号または第2号のいずれかに該当する場合に限ると規定しており、同項第1号は、「事務室の一部使用等で、当該使用に係る電気料金等がわずかであり、かつ、算出が明確にすることが困難なもの」となっている。
要領では、通常行政が使用する建物を想定しているが、体育館のような利用料を徴収して市民が使用するような特殊な形態の施設の加算金は想定していない。
この様な施設に対しては、要領第4第1項第6号の規定が適用され、個々の施設毎に状況を分析して基準を設定し、経費を明確に案分して算出する必要があるものと解するが、根拠となるものがなく、事実上、算出は困難である。
よって、社会教育課では、要領第4第2項に該当すると考えられるので、加算金は免除できるものと判断していた。
今後の方針
その後、7月に佐渡市の他施設の行政財産目的外使用の事例を調査したところ、他施設では目的外使用に係る加算金の免除は行っていないということが判明した。
そのため、他施設の事例を考慮し、元気トキめきクラブに対しても、平成25年度の行政財産目的外使用に係る加算金は免除しないこと、加算金の算出においては施設の特殊性を考慮しないこととし、他施設と同様の加算金に額を変更して納付を求めることとした。
過去の目的外使用については、許可書を出し、自治法236条の規定による時効により消滅していない平成20年8月分までの5年間分の加算金について、平成25年度と同様に額を算出し、遡及して納付を求めることとした。
加算金の算出
加算金の算出については、平成20年2月以降の会計伝票等を調査し、加算金の算出に必要な資料を作成し、その結果、下記のとおり額を算出した。
- 平成25年度:年額37,560円
- 平成24年度:年額34,800円
- 平成23年度:年額35,760円
- 平成22年度:年額33,960円
- 平成21年度:年額32,880円
- 平成20年度:年額20,080円(8月〜翌年3月分)
本件に対する元気トキめきクラブの説明は次のとおりである。
元気トキめきクラブの真野体育館事務所使用の経緯について
元気トキめきクラブの設立時において、事務局を当分の間、真野体育館に置くことについて、下越教育事務所・佐渡市教育委員会・教育委員会真野事務所・設立準備委員会とで連絡協議会を開催して決定している。
設立当初は事業運営が難しいことから、5年間は、市の援助を受けることを、当時の佐渡市教育委員会から会長ほか役員が口頭で確認しており、クラブマネージャー賃金1人分と使用料(体育施設・事務所)については全額援助されるものと認識していた。
初年度においては、補助金の他にクラブマネージャー(臨時職員)2人の内の賃金1人分を佐渡市が負担をし、真野事務所の担当職員においても全面的な協力体制にあった。
そのような事実からも、事務所の使用料については無償であると認識していた。
監査委員が認定した事実
元気トキめきクラブについて
元気トキめきクラブは、平成19年2月に設立した総合型スポーツクラブである「元気×2トキめきクラブ」が平成25年4月27日に解散し、その財産を引き継ぎ、活動目的も構成員もほぼ同じくする組織であることを確認した。
便宜上、設立時の「元気×2トキめきクラブ」も含め、「元気トキめきクラブ」と呼称する。
真野体育館事務所の使用に係る使用料及び加算金の徴収について
元気トキめきクラブの設立には、佐渡市教育委員会が支援し、設立後も臨時職員1人分の人件費を補助するなどの事実は確認できたが、請求人が述べているとおり、平成19年2月に設立してから平成24年度まで、真野体育館事務所の使用に関し、自治法第238条の4に伴う行政財産の目的外使用あるいは貸付に付随する申請や許可等の法的手続きがなされたことは確認できず、6年余りの間、使用料及び加算金等の納付の事実は確認できなかった。
平成25年度については、条例を適用し、使用許可申請書を提出させ、使用許可書も発行している。
そして、事務所の使用料は免除としているものの、駐車場2台分の使用料7,200円(月額300円の12か月分)と電話料等の加算金12,000円(月額1,000円の12か月分)の合計19,200円を納付させている。
しかし、条例第4条には「行政財産に附帯する電気、電話、ガス、水道、暖房、冷房等の諸設備に係る経費(以下『加算金』という)」を使用料に加算して納めることが規定されているにもかかわらず、この納付金額には、請求人の主張するとおり「真野体育館維持管理経費(共益分)の電気料・上下水道使用料・冷暖房料等」は算出根拠に含まれていない。
監査委員の判断
使用料及び加算金の徴収を行わなかった行為について
元気トキめきクラブの真野体育館事務所の使用に関し、本来必要な条例適用による行政財産目的外使用の申請、許可の手続きをせず、使用料及び加算金の徴収を行わなかった理由は、佐渡市教育委員会が総合型スポーツクラブの事業を担当職員の事務分掌に記載していたため、担当職員が業務として取り組んでいたことにより、この団体に対して行政財産目的外使用の手続きが必要との認識がなかったということである。
その結果として6年余りの間、条例に基づく目的外使用の手続きも使用料の減免の手続きもなく、使用料及び加算金の徴収が行われなかったものと認めざるを得ない。
なお、使用料及び加算金の納付については、条例第3条及び第4条に「目的外使用の許可」を受けた者に義務付けており、使用許可があったかどうかが問題となるが、使用許可については規則第2条及び第3条に、申請書の提出及び許可書の交付が定められている。この手続きはなされていないものの、利用実績から黙示的な利用許可があったものと判断した。
また、使用料及び加算金の黙示的免除がなされたとみることができるかであるが、元気トキめきクラブは口頭での約束があったと主張しているものの、そのことを認めるに足りる証拠がなく、平成19年度から佐渡市が支援のために行った補助金交付の事実と、使用料の請求がなされていなかったことをもって黙示的に免除がなされたとはいえないものと判断した。
平成25年度の使用料及び加算金の算出根拠の適否について
平成25年度の元気トキめきクラブの真野体育館事務所の使用料及び加算金の金額について検証すると、事務所使用料の免除については、元気トキめきクラブが設立から現在に至るまで、要領第2第1項にあるとおり、「公共的団体又は公益的団体」に該当し、条例第5条第2号により免除可能であるものと認められる。したがって、職員駐車場使用料として7,200円(月額300円の12か月分を2台分)を除き、事務所使用料を免除することについては教育委員会の判断に委ねられるものである。
しかし、加算金については、電話等として月額1,000円という定額を12か月分として12,000円としているものの、1,000円という月額単価設定の算定根拠が不明である。
電話料金は要領の第4第1項第4号に規定があり、その規定に基づき適用するべきものであるが、その適用をすることなく、1,000円という1か月当たりの月額単価を決定して算出しているが、その明確な算定根拠はないとの説明であった。
さらに、請求人の主張するとおり、加算金の算出において、真野体育館維持管理経費(共益分)の電気料・上下水道使用料・冷暖房料等の係数が加味されておらず、要領第4第1項各号の加算金の徴収についての算出基準を満たしているとは認められない。
これらのことから、平成25年度の使用料及び加算金について、19,200円としているもののうち職員駐車場使用料の7,200円以外については、その算出根拠に正当性があるとはいえないものと判断した。
監査の結果
結論
以上により、本件は請求人の主張する「『使用料』及び『加算金』の徴収が6年間されていないこと」については、条例第3条に「目的外使用の許可」を受けた者に使用料の納付を義務付けているが、徴収されていない事実が認められる。
また、「加算金の算出に真野体育館維持管理経費(共益分)の電気料・上下水道使用料・冷暖房料等の係数がないこと」という点についても、条例第4条で加算金を「使用料に加算して納めるものとする」と規定されているが、算出根拠に正当性がなく、不当性が認められる。
したがって、請求人の主張には理由があるものと認められるので、自治法第242条第4項の規定に基づき、教育委員会小林教育長に対し、1か月以内に、元気トキめきクラブに対する平成22、23、24年度の行政財産目的外使用の使用料及び加算金について、条例、規則、要領に基づく正当な金額を算出し、また、平成25年度の行政財産目的外使用の使用料及び加算金についても同様に、条例、規則、要領に基づき正当に金額を算出し直し、これらの金額を請求人に提示するなどの必要な措置を講じるよう勧告する。