佐監公表第6号
平成27年3月30日
佐渡市長、甲斐元也様
佐渡市議会議長、根岸勇雄様
佐渡市教育委員会委員長、仲川進様
佐渡市農業委員会会長、堀口一男様
佐渡市選挙管理委員会委員長、川島一三様
佐渡市固定資産評価審査委員会委員長、市橋悦男様
佐渡市監査委員、清水一次
佐渡市監査委員、中川隆一
地方自治法第199条第2項の規定に基づき、行政監査を実施したので、同条第9項の規定により、その結果を別紙のとおり報告します。
なお、監査の結果に基づき、又は監査の結果を参考に措置を講じたときは、同条第12項の規定により、その内容を監査委員へ通知願います。
監査の種類
地方自治法第199条第2項の規定による行政監査(公金以外の現金、有価証券及び通帳等の取扱いについて)
監査の実施時期
平成26年11月10日から平成27年3月26日まで
監査委員の氏名
- 清水一次
- 中川隆一
監査の目的
佐渡市においては、職務の関係上、市の歳入歳出である公金に属さない外部団体が所有する現金等を管理している場合があるが、これらの管理については佐渡市財務規則等の適用対象外となっている。しかしながら佐渡市職員によるこれらの現金等の取扱いにおいて事故等が発生した場合には、市の管理責任が問われることになる。
そのため行政事務処理手続きの適正確保の観点から「公金以外の現金等の取扱いについて」をテーマとして行政監査を実施するものとし、公金以外の現金等の適正な管理体制の検証を行うものである。
監査の対象
公金以外の現金等を取り扱う全ての部署(原則として平成25年度分)を対象とした。
また、佐渡市会計課及び公営企業会計を通さないで取り扱っている簿外管理現金等も対象とした。なお、職員同士の親睦会など業務とかかわりのないものについては対象外とした。
監査の着眼点
監査の着眼点は次のとおりである。
- 事務管理
- 佐渡市職員が関与する必要性があるか
- 事務局を設置している場合にその根拠は明確か
- 要綱等に規定されている事務手順は定着し、厳守されているか
- 職務権限は明確で、効率的か
- 従来の事務処理を踏襲しているため、非効率的なものはないか
- 保管状況
- 通帳、現金及び届出印の管理方法は適正か
- 通帳、現金及び届出印の管理責任者を定めているか
- 通帳、現金及び届出印の保管理由は適正か
- 切手等の金券類の管理は適正か
- 会計処理
- 入出金時の事務処理は適正か
- 出納整理簿は作成されているか
- 会計マニュアル等が整備され規定に則って事務処理がされているか
- 証拠書類は適正に管理されているか
- 内部統制機能は確立されているか
監査の方法
全部署にあらかじめ指定した様式による監査資料の提出を求め、提出された監査資料をもとに、抽出した30件について、関係書類等の監査を行うとともに、必要に応じて担当課のヒアリングと現地調査を実施した。
ヒアリングは6部署9団体に対し実施し、現地調査は4部署7団体に対し行った。
現地調査では担当部署を訪れ、「監査の着眼点」に留意して、団体等の現金、通帳、印鑑等の保管状況を確認した。
調査の概要は次のとおりである。
外部団体の会計を管理しているもの
全庁調査により提出されたもの98件
所管 | 件数 |
---|---|
議会事務局 | 2件 |
農業委員会事務局 | 1件 |
総務課 | 3件 |
地域振興課 | 1件 |
交通政策課 | 2件 |
市民生活課 | 1件 |
環境対策課 | 1件 |
社会福祉課 | 9件 |
高齢福祉課 | 3件 |
農林水産課 | 14件 |
建設課 | 1件 |
学校教育課 | 3件 |
社会教育課 | 12件 |
北教育事務所 | 1件 |
西教育事務所 | 4件 |
東教育事務所 | 3件 |
南教育事務所 | 3件 |
消防本部 | 4件 |
両津消防署 | 4件 |
南佐渡消防署 | 1件 |
両津支所 | 3件 |
相川支所 | 6件 |
羽茂支所 | 3件 |
佐和田行政SC | 1件 |
畑野行政SC | 1件 |
新穂行政SC | 1件 |
真野行政SC | 4件 |
小木行政SC | 2件 |
赤泊行政SC | 4件 |
合計 | 98件 |
- 注釈
- 学校教育課は学校給食センター及び学校給食を各1件とした。
- 社会教育課には両津地区教育係及び各出先機関を含んでいる。
- 本庁担当課で取りまとめて報告されたものは本庁担当課に含んでいる。
- 行政SCは行政サービスセンターの略。
抽出した30件
所管 | 調査 | 団体名 |
---|---|---|
総務課 | ◎ | 佐渡航友会 |
新潟県市町村総合事務組合 交通災害共済本庁事務所 | ||
交通政策課 | 佐渡市地域公共交通活性化協議会 | |
佐渡新航空路開設促進協議会 | ||
市民生活課 | 佐渡市健康推進協議会 | |
環境対策課 | ※ | 佐渡を美しくする会 |
社会福祉課 | ※ | 佐渡市民生委員児童委員協議会 |
※ | 佐渡地区保育事業研究会 | |
農林水産課 | 佐渡地域協議会 | |
佐渡市農業再生協議会(水田) | ||
佐渡地方植樹祭実行委員会(※にいがた緑の百年物語) | ||
※ | 佐渡市離島活性化協議会魚介類部会 | |
◎※ | 佐渡市離島活性化協議会 | |
※ | 朱鷺と暮らす郷づくり推進協議会 | |
学校教育課 | 緑の少年団交流集会実行委員会 | |
国仲学校給食センター(給食センター6施設より抽出) | ||
高千中学校(学校給食9校より抽出) | ||
社会教育課 (両津地区教育係) (北教育事務所) (南教育事務所) | ◎ | 赤泊地域子ども会連絡協議会 |
両津地区公民館事業活性化支援隊 | ||
佐渡市スポーツ推進委員協議会 | ||
両津体育協会 | ||
相川体育協会 | ||
◎ | 両津芸能に親しむ会 | |
赤泊地区活性化推進委員会 | ||
相川支所 | ◎※ | 相川地区沿岸防犯協力会 |
◎※ | 故近藤元次先生銅像建立発起人会 | |
◎ | 佐渡地区交通安協会相川支会 | |
赤泊行政SC | ◎ | 赤泊港利用協議会 |
消防本部 | ◎ | 新潟県危険物安全協会 佐渡地区支会 |
両津消防署 | 両津地区防火委員会 |
- 注釈
- ◎はヒアリングを実施したもの。
- ※は現地調査を実施したもの。
抽出した30件についての調査概要
(1)会計事務取扱規定等(以下「会計規定」という)について
項目 | 有 | 無 |
---|---|---|
会計規定の有無 | 6件 | 24件 |
会計規定どおりの取扱いの有無 | 4件 | 26件 |
- 注釈
- 会計規定については、単に会計年度の期間や決算書の作成、監査の実施などの項目のみを定めただけで取扱い方法などを定めていないものは「無」とした。
(2)入出金の確認、通帳、現金及び届出印の保管状況について
項目 | 有 | 無 |
---|---|---|
入出金について、複数人での確認の有無 | 19件 | 11件 |
通帳、届出印の複数担当者の別管理の有無 | 9件 | 19件 |
通帳、現金及び届出印の施錠可能場所での保管の有無 | 29件 | 1件 |
キャッシュカードの作成の有無 | 3件 | 27件 |
- 注釈
- 現金のみ管理している場合は通帳、届出印の管理項目から除外した。
(3)出納整理簿の整備、証拠書類の保管状況について
項目 | 有 | 無 |
---|---|---|
出納整理簿の整備の有無 | 22件 | 8件 |
請求書や領収書の整理の有無 | 25件 | 5件 |
- 注釈
- 出納整理簿は、項目ごとの内訳を並べただけのものや、伝票形式ではなく請求書等をまとめて保管しているだけのものは「無」とした。
(4)切手の保管状況について
項目 | 有 | 無 |
---|---|---|
郵便切手の出納整理簿の有無 | 5件 | 5件 |
- 注釈
- 郵便切手を保管していない場合は除外した。
(5)外部団体の事務局の外部化について
項目 | 有 | 無 |
---|---|---|
外部団体の事務局の外部化を検討の有無 | 16件 | 13件 |
- 注釈
- 外部化の検討の余地がないものは除外した。
(6)決算書の作成、報告、監査の状況について
項目 | 有 | 無 |
---|---|---|
団体内での決算書作成と報告の有無 | 23件 | 7件 |
決算書の誤りの有無 | 8件 | 22件 |
団体内での監査の有無 | 22件 | 8件 |
公金以外の簿外管理現金等を預かるもの
全庁調査により提出されたもの62件
所管 | 件数 |
---|---|
総務課 | 2件 |
社会福祉課 | 5件 |
農林水産課 | 2件 |
観光振興課 | 1件 |
学校教育課 | 1件 |
社会教育課 | 1件 |
南教育事務所 | 2件 |
南佐渡消防署 | 1件 |
両津支所 | 6件 |
相川支所 | 5件 |
羽茂支所 | 5件 |
佐和田行政SC | 4件 |
畑野行政SC | 4件 |
新穂行政SC | 3件 |
真野行政SC | 4件 |
小木行政SC | 6件 |
赤泊行政SC | 4件 |
高千連絡所 | 6件 |
合計 | 62件 |
なお、公金以外の簿外管理現金等を預かるものについては、監査期間が現金等の取り扱い時期を外れていたため、実態は調査できなかった。そのため、関係書類等による管理状況の確認を行った結果、特に問題はなかった。
監査の結果
監査の結果、公金以外の現金等の取り扱い事務について、一部に不適切な事務処理や改善を要する事例が見受けられた。
今回の監査における指摘事項は次のとおりである。
指摘事項
1 公金以外の現金等の取扱い事務の実態について
- 公金以外の現金等の取扱いに関して、基準やマニュアルなどの会計規定がほとんどの部署及び団体において定められていなかった。
これらの規定は、実際の事務処理の流れを明確にし、適切に処理する上で必要不可欠である。規定がない場合、任意の簡便な手続きとなり、事故等が発生する危険性が高まる。
今後、公金以外の現金等を取り扱う場合は、必ず会計規定を定め、その規定を順守されたい。 - 市の公金取り扱い事務においては行うことができない立替払を行っていた。立替払は事故や過ちが起こりやすいので避けるべきである。やむを得ず行うときは、その会計処理の手続きを会計規定に明記されたい。
- 収入簿・支出簿・出納整理簿がなく通帳のみで管理しているものがあった。市職員が公務として公金以外の現金等を取り扱う場合、その責任の所在は佐渡市となる。したがって、公金と同様に厳正に取り扱うべきであり、事務局の信頼性を担保する意味からも会計規定にその旨を明記し、収入簿・支出簿・出納整理簿は備えられたい。
- 入出金の際に調書類が作成されておらず、上司の決裁を受けないで1人の担当職員が事務処理を行っているものがあった。また、年度末にまとめて役員の決裁を受けているものがあった。
意思決定行為を経ることなく職員が単独で出納業務を行うことは、不適正な事務処理を招く可能性が高くなるので、入出金に際しての手続きは会計規定にその旨を明記し、複数職員による確認と上司の決裁の義務付け等、内部牽制が働く体制を確立されたい。 - 通帳と届出印を担当職員が一括して管理している事例が多数あった。内部牽制及び防犯上の観点から、管理職員を含めた複数の職員が施錠できる別々のところに保管し、その鍵も別々に管理するよう改められたい。
- キャッシュカードを作成しているものがあったが、担当者個人の判断で入出金が可能であり、不正の原因になりやすいので、キャッシュカードは作成すべきではない。やむを得ず作成する場合は、厳格な管理を求める。
- 市職員が外部団体の会計を担当していて決算書の作成をせず、団体内での監査も受けていないものがあった。また、決算書を作成し監査は行っているものの決算書の内容が誤っているものもあった。
市職員が携る会計事務として不適切であり、会則、会計規定の整備と併せて適正な処理をされたい。 - 切手の多数購入で出納整理簿が整備されていないものがあった。切手は金券であり、他自治体では着服事件が起きているので、出納整理簿により適正に管理するよう求める。
2 市職員が外部団体の会計事務を取り扱うことについて
- 市職員が外部団体の会計事務を取り扱う必要性を検討せず、その根拠も明確でないものがあった。
市職員が外部団体の事務を取り扱う場合は、地方公務員法第35条の職務専念の義務違反とならないよう、事務分掌に明文化するか明確な職務命令による職務とされたい。 - 市職員が事務局として会計事務を取扱っているが、最近の数年間は活動を行っていない団体があった。活動を休止している団体については、その団体の継続の必要性も含めて、今後の対応について見直しを検討されたい。
3 その他
- 今回調査した団体の予算において、繰越額がその団体の年間の支出額を上回っているものがあった。佐渡市が補助金等を支出している場合は、その団体の活動実績を精査し、補助率や補助金額の見直しを検討されたい。
- 市有地に銅像を設置した団体の通帳を保管していたが、その銅像の所有権と管理体制が不明のまま、市職員がその通帳と銅像の管理を行っていた。早急に銅像の所有権を明確にし、適正な管理体制を整備されたい。
監査委員の意見
佐渡市職員が外部団体の会計を管理し、公金以外の現金等を取り扱っていた件数は98件で、総額は、6億5800万円を超えていることが判明した。
ところが、これらの高額な現金等は、公金ではないことから地方自治法及び佐渡市財務規則の適用がなく、会計管理者の審査対象外である。そのため、その取扱に関する統一的な基準や規則等はなく、所管部署の裁量に委ねられているのが実態である。
しかし、佐渡市職員がこれらの現金等を取り扱うからには、公金と同様に適正に管理しなければならず、管理上の問題があれば市がその責任を問われるのは当然である。
特に最近、他の自治体において、これらの現金の職員等による横領事件が起きており、当市においても事件・事故を未然に防ぐ対策が必要である。
今回の監査により、佐渡市の公金以外の現金等の取扱いについて不備な点が多く存在することが判明した。公金以外の現金等の取扱いについては、統括する部署を明確にし、統一的な取扱い基準の策定と指導の徹底により内部統制が機能する体制を確立するよう求める。
また、公金以外の現金等の取扱いをなるべく避けるために、市職員が担っている外部団体事務局の外部化の検討を実施されたい。
外部団体の事務局運営については、本来は各団体が自立し、市は補助的役割に徹するべきものである。 市が関与しないと事業の遂行が困難な団体など、やむを得ず市職員が事務局運営を担う必要がある場合にも、その担当部署のみで判断せず、市の施策推進上必要であるか等の観点から全庁的立場で判断するとともに、業務命令としての手続きを明確にすべきである。