研修会の概要
平成19年10月5日、「組織機構の風土改善」をテーマとした職員研修会を開催しました。内容は、群馬県太田市長の清水聖義氏による講演です。
- 日時
- 平成19年10月5日(金曜日)、午後1時30分から午後3時
- 会場
- 金井コミュニティセンターホール
- 演題
- 「行政運営から行政経営へ」市役所は市内最大のサービス業とは?
- 参加者
- 125名
研修の目的は、旧態依然の公務員意識や職場体質から脱却し、コスト意識を持ちながら職員自ら改革・改善する組織風土へと転換していくこと。そのために、太田市の具体的な実践を通して「市民本意の行政サービス」や「行政運営」について講演していただきました。
講演録(要旨)
群馬県太田市長、清水聖義氏
太田市では、滞納整理のために滞納専門の取立て屋さんを市長直属で作りました。「年間何億円」と目標を持たせて、担当を決め、動かし始めたところ、他の部署では目立たなかった職員が、一度目標を持って動き始めるとがんばるのです。自分の目標がいくらかずつでも上がってくることによって、やる気を起こしてくれています。
行革とは、みんなが幸せになる手段
三位一体の改革の話が出始めた頃、21世紀臨調の仲間でグループを作り、税源移譲をやろうという話になりました。私は、行革というのは、みんなが幸せになる手段だと思います。ただ苦しむための行革ならやらないほうがましです。市民に笑顔をもたらす為に自分達の権限と、裁量権を高め、市民に幸せを与えるという道筋でした。ところが国は、3兆円の税源移譲をしたけれど、現実は、国庫補助が4兆5千億円削られ、さらに地方交付税をどんどん切り始めました。これにより固定費、維持管理費にお金がかかっている地方自治体は、一気にダメージを受けました。これは、我々グループが考えていた行革と違います。
職員のがんばりを認める環境づくり
我々は「税金を貰っている分は必ずお返しをする」ということをいつも考えることが一番大事ではないでしょうか。在宅で歩けないお年寄りに電動ベッドをタダで貸し出すため、行政センターの職員に「新聞紙を集めて売って、電動ベッドを購入する」という目標を持たせました。地域で信頼がないリーダーでは絶対新聞紙も何も集まらない。信頼というのは、地域の為に一生懸命やっているとみんなに認めてもらうことです。そして、そういう人を出来るだけ重用するようにしたのです。職員のがんばりを認めてあげられるような環境づくりは、私たちの役割だと思います。
現場に行って気付いたことを私たちが改善すれば、市民の満足度は上がります。現場に行かず、何もしないでは、市民の要望や考えていることは、我々のところに全然跳ね返ってきません。だから現場が一番です。指示するときは自分が誰よりも一番良く知っているくらいだと圧倒的に効果的です。
市民は議会よりもシビア
今、改革という名前のもとで、地方がやっつけられる中、我々が頼りに出来るのは市民しかいません。市民と協働して私たちのまちをつくることが大事です。そこで、市民の参画と協働をテーマに「まちづくり基本条例」というのが出来ました。税金の1%、3億円を市民が自由に使える。市は一切関与せず、市民会議メンバーでいろんな提案を審査して、分配することにしました。また、しがらみを一切なくし、補助金をカットしてくれます。市民は議会よりもシビアです。自分たちの税金を使うという意識がある。職員は、「税金をいただいている」という意識が一般的に無いのではないでしょうか。
数値目標の設定を
私が今取り組んでいることが、10年間で200億円の経費削減策です。その中のメインは人件費を落とすこと、それには仕事をなくすことが一番です。今は、専門職は民間の方が、ほとんど良くなっています。専門的なもので我々以上の高いサービスが提供できるものは全部民間の人にやっていただく。
もう一方で我々にできる少しの努力をすること、それを太田市の場合はISOに求めています。ISO9001番、14000番、27001番をとりました。今、行政経営課では、各課で数値を入れた目標を作らせています。具体的なものを達成していくことで、自分達の質を上げることです。昨日よりも今日、今日よりも明日はもう一歩先へ行きたい。その方が嬉しいし、喜びではないですか。自分が達成した時の喜びを感じた人間は絶対強いです。だから、具体的な言葉で表せるような環境を作ってやることが大事です。
今苦しめられているまちがいくらかでも良くなったとか、市民の笑顔がいくらかたくさん出たなと言われるようなまちに、全国が甦ってくれればいいなという気持ちであります。
- 注釈
- この講演録は、要旨のみを抜粋したものです。詳しくは講演録(全)をご覧ください。
意見交換
清水氏(太田市長)と北村氏(太田市秘書室長)に対する質疑応答の記録です。
- 質問1
- 職員採用は、学力試験を全部やめて、ディベートのみにされたのでしょうか?
- 清水氏
一次試験は数が多いので、まずディベートを行います。市民が来たときに対応しなくてはいけないので、頭がいいだけでなく口も達者でなくてはいけない。350人来たとすると50人まで絞って、その後、50人の筆記試験をやると、300人分試験を頼む金が助かります。
ディベートの出来ない人はうちの職員ではいらないというのが基本的な方針です。東大卒が一次で落ちました。学校は伏せて、課長以上がディベートの審査員になって選ぶので、どこの大学卒業かわからないのです。頭がいいだけが能じゃない。いいに越したことはないですけれども。市民にちゃんと説明責任をはたせる人がいいと思っています。
- 質問2
- 滞納者に対する行政サービスの制限について、どこの市町村でも問題になっている点かと思われます。権利と義務ということで、そこには納税の義務もあると。太田市ではどのようなことを行われたのか、また成果として申請前に納税しようという意識が高まったとありますが、具体的にお教えいただきたいと思います。
- 清水氏
要は自分が特になるものを貰うのは、元は税金です。税金を払わない人が、貰うだけを優先するというのは極めておかしい話で、そういう金は出さない。うちは申請に来たものは全部税金に回ります。そして払ってないかチェックを入れて、相談に応じる。でも、払えない人もいますから、相談にのります。どういう分割、分納の仕方があるとか、そういう相談はきちっとのってあげることです。税を払わない人が貰う一方っていうのは非常におかしい話。これは職員提案です。
- 北村氏
31項目ですが、国・県に関わるものはしておりません。市単独事業だけです。特に高齢者、障がい者についてはそういう制限は設けていません。ですから、補助金等申請するときに納税証明を貰ってもらいます。平成16年の実績ですが、409件納税証明をもらえない方がいまして、指導受けて完納したのが110名。一部が105名。いわゆる分納制約、192名。呼び出し中、これが受けられない人で、125名。そんな実績があります。
職員アンケート結果
研修会終了後、参加した職員へアンケートを行いました。
- 研修会参加人数
- 125人
- アンケート回収数
- 111人
- アンケート回収率
- 88.8%
研修について
問1 : 本日行われた研修会(講演)の内容について

回答 | 回答数 | 構成比 |
---|---|---|
大変参考になった | 48 | 44.9% |
参考になった | 57 | 53.3% |
あまり参考にならなかった | 2 | 1.9% |
参考にならなかった | 0 | 0.0% |
計 | 107 | 100.0% |
問2 : 問1で「1」「2」とお答えになった方にお伺いします。研修会(講演)のどのような箇所が参考になりましたか。(抜粋)
- 行革の心は「市民の喜ぶ顔」との理念で、リーダーシップを発揮している姿。(市民に接する気持ち、考え方が心から伝わった。)
- 目標を数字で定めることの重要性。職員の意識改革が住民に笑顔をもたらすという言葉の意味を知ることができました。
- 佐渡市の現状を再確認できた。(考える良い機会になった。)
- 不要と思われる事業の廃止、または専門分野の民間委託で人件費削減。
- 人のやる気を起こさせるのは目標を持たせること、また抽象的な目標ではなく、できるだけ具体的な目標を持つことが大事というのが印象的だった。
- 具体的事例(1%町づくり、収納率向上の施策)
- 現場に実際に行ってみないと、市民の要望はわからないという話し。
- 「行革=幸せを与える」行革と言うと役所内部で完結するイメージがあったので目からウロコでした。
- ISOを取得している。審査(補助金)を市民がやっている。
- 意見交換会。
- 実践を通しての行政経営とはどう進めていくのか、市民の目線で働く組織になるべきかを学んだ。
- 税の話しは衝撃だった。
- 具体的事例をとり入れ、身近な課題、その対応方法、モチベーションの上げ方がわかりやすかった。
- 現場に実際に行ってみないと、市民の要望はわからないという話し。
問3 : 問1で「3」「4」とお答えになった方にお伺いします。今後、研修会を企画した場合、どの様な形式、内容であれば参加したいですか。(抜粋)
- 今日と同じ。
- 飲み会等OKにして和やかにしたらどうか。
- 行革は必要だと考えている。そのために必要な馬力がでるような研修であると良かった。
- 自治体が所有する財産の処分について。
- BISの解読。
問4 : 業務改善等に対する意見が言い易い(または反映され易い)環境ですか。

回答 | 回答数 | 構成比 |
---|---|---|
言いやすい(反映されている) | 51 | 45.9% |
言いにくい(反映されにくい) | 40 | 36.0% |
回答なし | 20 | 18.0% |
計 | 111 | 100.0% |
理由(抜粋)
- 係長のみではあるが意見は話し合う。課としては人数多くムリ。
- 反映するように自分で動く。
- 職員一人一人が常に効率的な業務改善を考えている。
- 上司が耳を傾け、声かけをしてくれる。
問5 : 課内(もしくは係内)で、仕事の進め方などについて話し合うことはありますか。

回答 | 回答数 | 構成比 |
---|---|---|
日々、または週毎くらいのペースでよく話し合う | 31 | 27.9% |
月に一度〜数回話し合う | 31 | 27.9% |
あまり話し合わない(年に数回) | 30 | 27.0% |
ほとんど話し合わない | 8 | 7.2% |
回答なし | 11 | 9.9% |
計 | 111 | 100.0% |
問6 あなたが思う職員の意識改革とは、どのようなものですか。また、それをすすめるためには何が必要だと思いますか。(抜粋)
- 公務員の常識は社会の常識ではない。気付くきっかけが必要。民間からの人材登用をきっかけに違う空気を入れるのも良いのでは。(前例にとらわれず、自分の考えも疑いながら改善を進めることが必要。)
- 自身の仕事を、1日、1週間、1ヶ月とかえりみる事が大切なのでは。
- 職員の意識改革も必要だが、管理職や理事者の意識改革が必要である。もっと危機意識を共有する必要があるので、定期的に集り、単に報告 だけの会でなく忌憚のないところを述べ合う場が大切と考える。
- 各職員が職務の目的について認識を新たにする(問題意識を常時持つ)→具体的な改善目標を設定する。→実践→成果を評価し合う。(課員 全員で評価する。)→改善に目標を設定する。
- 差し迫った現場、状況の場や時間が多くの職員に与えられた方が良いのではないか?危機感を持たせる事。改革理解度などによるグループ分 け。そのグループに応じた研修。研修について、意見交換では、多くの意見がでて良かったと思う。研修の頭から意見交換を行う研修会があ って欲しい。
- 数値目標を持つことの必要性。
- 研修の回数増と、参加できる体制が必要。
- 市長と職員のコミュニケーション。まずは職員間の意思疎通が大切だと思います。(本庁と支所との意識格差(温度差)が大きい。)
- 佐渡市のビジョンの明示と職員の意識統一。
- 改善提案を出すこと(意識改革)。
- 職員は税金を給料としてもらっているので、市民の幸福のために働く、という意識を常に持つ必要がある。その為にはISO取得を目指すなど具体的な理想像を設定し、それに向かって努力しなければならないと思う。
- 若い者は腐らずに(太田市長の言うように)目標を持つ。全体で意識改革できるよう、職員研修、話し合いをし、是認で向上していく。市長、管理職は他人事としないよう頑張る。選挙以外でも現場が大事。市民も諦めないように。(シンプルな内容で聞き易くためになりました。庁内放送すると良いですね。)
- 費用対効果。住民が求めているサービスか否か。職員全てが住民サービスを受ける立場で考えてみること。(行政はサービス業であるという意識が大切である。)
附:講演録(全)
清水氏(太田市長)
こんにちは。佐渡に来たのは、県会議員の頃に1度、今回で2回目です。
最近、厚生労働省が、後期高齢者の保険料を上げようとしています。国保税もいいところに来ていて上げることが出来ない状況で、滞納がひどく、どうしようかと悩んでいました。そこで、滞納整理のためにコールセンターを作りました。未納者に優しい声でちゃんと説明してあげられる接遇ができるような雰囲気で、滞納整理をやっていこうと始めました。
次に滞納の専門の取立て屋さんを市長直属で作りました。太田市は、350〜360億円くらいの税収がありますが、滞納が累積で1割くらい出ています。単年度での徴収率は90数%ですが、大口がなかなか取れないとなると、たまります。これを減らすために、「年間何億円」と目標を持たせて、担当を決め、動かし始めました。毎月私のところに「今月はいくらです。」と報告に来て、その度に褒めてやりました。すると他の部署では目立たなかった職員が、一度目標を持って動き始めるとがんばるのです。自分の目標がいくらかずつでも上がってくることによって、やる気を起こしてくれています。
三位一体の改革の話が出始めた頃、21世紀臨調の仲間で今の総務大臣の増田さん、宮城県知事の浅野さんや、北川さんたちとグループを作り、税源移譲をやろうという話になりました。
ところが国の方が、頭が良かった。国は3兆円の税源移譲をしたけれど、現実、我々のところに来る国庫補助が4兆5千億円削られ、さらに合併しなければ減額すると脅迫しながら、地方交付税をどんどん切り始めたわけです。これにより固定費、維持管理費にお金がかかっている地方自治体は、一気にダメージを受けました。
これは、我々グループが考えていた行革と違います。私は、行革というのは、みんなが幸せになる手段だと思いますし、ただ苦しむための行革ならやらないほうがましです。私達が考えていた税源移譲と権限移譲とは、市民に笑顔をもたらす為に自分達の権限と、裁量権を高める。その中で、市民に幸せを与えるという道筋でしたが、全く変わってしまいました。今のやり方は、ある意味、地方いじめで、自分達の裁量権がなく、国にすべて首根っこを閉められています。我々は市民に相応のサービスを与えますが、ありがたいと思っている人はいるかもしれない反面、むしろ市民は七面倒くさいなと思っているのではないでしょうか。わざわざ市民が市役所に来て何百円か取られて、住民票を持って行かなければならないのがサービスかなと考えると、そんなのは当たり前のことで、それをやるためにたくさんの職員がいて、税金を食っていることを、まず自分達が認識する必要があるのです。一日過ごして、明日もまた来れば同じことを繰り返すような職員から脱皮すること。意識的には、今言ったような、“我々は税金を貰っている分は必ずお返しをする"ということをいつも考えて、行政改革をやろうか、改革をやろうかというときには、市民から「いいことを一生懸命がんばってやってくれているね」とか、「我々のほうにそんなに負担をかけないで何か一生懸命やってくれてるね」という反響になることが一番大事ではないでしょうか。
選挙運動で歩いたとき、在宅で歩けないお年寄りに「電動ベッドをタダであげたい」と思いました。市長になり、電動ベッド400台を買いたいがお金がない。そこで、公民館の代わりに設置した行政センターの職員に“新聞紙を集めて売って、電動ベッドを購入する"という目標を持たせました。当時の太田市で、6万世帯くらい、これがみんな新聞を取っています。それを集めるのに地域で信頼がないリーダーでは絶対新聞紙も何も集まらない。信頼を持つというのは地域の中で、みんなに認めてもらうことです。地域の為に一生懸命やっているという人間でなければ、新聞紙は集まらない。税金を使わず、新聞紙を売って、400台のベッドを買いそろえ貸し出すことができました。その後、利用者の遺族から「100万円寄付しますので、電動ベッドを買ってください。」という人が出始めました。電動ベッド循環というのがすごくうまくいきましたし、職員のやる気にも結びつきました。
そして、新聞紙をいっぱい集めた者を、その人口比率で、すぐに課長にすることにしました。実務面で地域の信頼の高い人、こういう人を出来るだけ重用するようにしたのです。職員のがんばりを認めてあげられるような環境づくりは、私たちの役割だと思います。目標を与えてそれを達成させることがすごく大事です。
現場に行って気付いたことを私たちが改善すれば、市民の満足度は上がります。現場に行かず、何もしないでは、市民の要望や考えていることは、我々のところに全然跳ね返ってきません。だから現場が一番です。例えば下水道の進捗率を聞くときに、まず自分で現地を見て来るのです。誰よりも一番良く知って、指示するときは自分が一番になるくらいですと圧倒的に効果的です。
今はお金がない時代です。国の圧力、改革という名前のもとで、地方がやっつけられ始めました。この中で我々が頼りに出来るのは市民しかいません。市民と協働して私たちのまちをつくることが大事です。そこで、市民の参画と協働をテーマに「まちづくり基本条例」というのが太田市で出来ました。税金の1%、3億円を市民が自由に使ってくださいということで、市は一切関与せず、市民会議メンバーでいろんな提案を審査して、分配することにしました。これは、市民が元気になるので大成功だと思います。市民は、意外と倹約家で初年度は約4500万円、今年も、おそらく1億円は使わないでしょうか。
そして補助金をカットしてくれます。しがらみを一切なくし、本当に欲しければ1%に申し込んで、市民の皆様方で審議してOKになったものは金を出す。市民が審査し、決定して自分達が使って検証していくというサイクルの環境づくりができました。市民は議会よりもシビアです。自分の責任で決裁するわけですから、自分たちの税金を使うという意識があり、職員はどちらかといえば人の金を使って…という意識です。我々は税金をいただいている、一般的にこの意識が無いのではないでしょうか。
私が今取り組んでいることが、10年間で200億円という経費削減策です。年間で20億円を生み出すというのは大変なことです。その中のメインはやはり人件費。人件費を落とすには仕事をなくすことが一番です。
例えば、合併したところに診療所があります。最初は、周りに医師がいなかったから重宝されましたが、今は、開業医が出来て閉鎖しても影響はない。診療所があるから続けたくなりますが、赤字が8000万円です。8000万円を持ち出して効果があるかというと何もないのです。医者は民間で充分間に合うから今の診療所のケースもやめることが一番だと思います。私のところにサマーランドというプールがあり、それが約8000万円の赤字でした。赤字を全部摘出して、止めました。最終的に、サマーランドは駐車場になって逆に駐車場料金いただいて、2000万円ぐらいのプラスになっています。
太田の保育園は、ほとんどが民間です。仕事をやめてサービスが変らなければ、私たちがやめることが雇用の創出にもなります。よく保育園は、民間に移すとサービスが落ちると反対する人がいますが、私どもは、地域で区長が理事長になって地域の役員さんが法人を作り、その法人が引き受ける、と言うやり方をし非常にうまくいきました。
そんなことをやりながら、旧太田市が1300名の職員がいましたが、1100名まで落としました。今は職員1500名、これを400名削減して1100名にしようとしています。この大きな根っこは仕事をやめることです。民間が出来るものは、民間の人にやってもらうということです。
極端なのは水道局。私どもはこれを抱括的に委託しました。当時は78名の職員を58名にして、もう限界。あとは、仕事をやらないことで人数を減らせる。今は32名です。水道というのは、役所が品質を安定させ、必要な量を供給する義務はあります。しかし我々のところに本当に水に詳しい職員が何人いるでしょうか。一人の人間を20〜60歳まで給水係に置くわけにはいかないのです。すると人間が変わるたびに、サービスというか品質が落ちる可能性が高い。ならば、より安定した人材、専門の技術を持った人間がいる企業に委託していこうと。最後は、5名くらいで管理、適切な水を供給しいているかどうかのチェックができるような体制にしていこうとしています。今は、専門職は役所より民間の方が、ほとんど良くなっています。専門的なもので我々以上のレベルで高いサービスが提供できるようものは全部民間の人にやっていただく。
太田市も1500人の人間を1100名にするというのは非常に厳しい目標です。ただ採用を0にしてしまえばいいわけではなく、我々の責任として、適切な人間、最低限度の人材を維持していかなくてはいけません。今年度も70人弱辞めますが、20人ぐらい採用します。それをやっていくと、年度計画で、最終的に1100名の体制で21万都市を運営するという体制が出来上がり、約20億円のサービス増が市民に提供出来ます。職員が少しレベルを上げると、可能なのです。
片方では民間で出来ることは民間にお願いし、もう一方で我々にできる少しの努力をすること、それを太田市の場合はISOに求めています。
私たちがサービスの質を落とすわけにはいかない、セブンイレブンまではいかないけれど、まず365日オープン体制をとろうということ、しかもサービスを提供する人間の資質を上げることが非常に大事だと思います。うちは、ショッピングセンター3店舗に窓口を出しており、ショッピングセンターが休みの時以外は、夜7時まで毎日オープンしています。児童館にしても、12月31日と1月1日以外は全部オープンです。
もう一つはISO9001番、14000番、27001番をとりました。今、行政経営課では、各課で数値を入れた目標を作らせています。例えば電話がくれば3回以内で必ず取るとか。こんなつまらないことでも必ず改善になる。具体的なものを達成していくことが人間を作って行くのです。抽象的な言い方、曖昧なものは、我々は非常に達成しにくい。この出所はISOです。人間を減らすには部署を失くすと同時に、今言ったように人間改造をどうやって行うかが大事なことなのです。そうやって自分達の質を上げることです。昨日よりも今日、今日よりも明日はもう一歩先へ行きたい。その方が嬉しいし、喜びではないですか。自分が達成した時の喜びを感じた人間は絶対強いです。だから、具体的な言葉で表せるような環境を作ってやることが大事です。
佐渡も非常に広くなって、サービスが行き届かなくならないようにするためには、なかなか大変な作業がいるわけです。うちは公民館をやめて行政センター化し、各地区にふれあい相談員をおきました。ふれあい相談員というのは、一人暮らしの年寄りを全部担当し、あるいは保健業務も行い、サービスを絶やさないようにしています。
一つのヒントとして捉えて、今苦しめられているまちがいくらかでも良くなったとか、市民の笑顔がいくらかたくさん出たなと言われるようなまちに、全国日本中が甦ってくれればいいなという気持ちであります。
北村氏(秘書室長)
太田市のホームページを見ていただくと、「市長のとれたて日記」というブログがあります。ぜひ、皆さんの意識改革にご活用いただければと思います。そのほか、行政経営課というところに、ISOに関すること、行政のマネジメントシステム、市民に分かりやすい数値目標、改善活動の実践など業務メニューがありますので、後でご覧ください。
ユニークな取組みとしては、8時30分に各課長級が自分の課に関する思いや、運営方針を1分間にまとめて庁内放送しています。出先などの届かないところにはLANを使って原稿が流れますので、どの課長がどんな話をしているか、何を考えているか分かります。
また、各課で、太田市の経営方針や心構えを唱和するところもあります。自分達が今までの公務員と違って、市民サービスの先頭に立ち、市民の為に税金を使う、それも市民の立場、目線に立って、ということが一番中心になっています。
太田ローカルアカデミーを11月に開催します。太田市が今までやっている、行政改革のテーマ別に沿って、私たちの悩みを聞いていただく。また、どんなふうに取り組んでいったのか、それと皆さんの思いと、お互いに研修しあいながら、地方自治をより市民の目線に立って改革して行こうという取り組みです。佐渡市からもぜひ参加して、地方自治体をどうしたらいいのか、意見交換させていただければと思います。
また、太田市経営方針というのがありますが、これは職員が毎年自分の目標を掲げることになっており、これを中間評価し、最終評価して、See、Plan、Do、Check、Action、がなされています。
そのほかにも、市長への手紙というのがあります。苦情やクレームに対して各課がきちっと対応して、苦情を徹底的になくしていく。一つの苦情の裏にはさらに10も20も苦情が隠れています。一つの苦情をなくしていくことによって、さらに市民の満足度が得られます。
もっと些細なことでは、市民サービスアンケートというのがあります。窓口での職員や周りの職員の対応はどうだったのか。これは市長決裁欄があり、必ず市長のところに行きます。回答についても、いい加減な対応をしているとこれは何だということもありえます。
ホームページを通じて、いろんな課が紹介されています。お問い合わせいただければ、できるだけ皆さんと一緒に考えさせていただきますので、よろしくお願いいたします。